Skip to main content

Club Innovation

Tokyo rise 

~立ち上がる東京

東京広尾ロータリークラブ

東京広尾ロータリークラブの会員:(左から)ニコラス・ボルツェさん、伊藤 藍さん、服部陽子さん、アラン・ヴァグジアルさん。由緒ある増上寺(東京)にて。

写真撮影:Irwin Wong

世界有数のグルメ都市と言われる東京の水準から見ても、服部陽子さん宅の食卓に並ぶご馳走には目をみはるものがあります。5月のこの夜、2018-19年度の第2750地区ガバナーを務める服部さんが新鮮なカニやキュウリの巻き寿司やいなり寿司を用意。ほかにも、カツオのたたきや、数時間煮込んだとろけるような角煮も振る舞われました。

テーブルには和食以外の料理も並び、4大陸6カ国の出身者が集まる東京広尾ロータリークラブの会員の舌を満足させるものとなりました。パリ出身で東京在住45年になるアラン・ヴァグジアルさんはパン・ド・カンパーニュと本場のカマンベールチーズを持参。この夜はメキシコ料理のグワカモーレまで振る舞われ、クラブで唯一のメキシコ出身パブロ・プガさんは「服部さんが作ってくれたんです」と話します。

今回の食事会は通常のロータリー例会と比べて華やかですが、これには理由があります。東京広尾ロータリークラブでは年に数回、木曜日の昼食例会の代わりに、会員の自宅でカジュアルな夜間例会を開いています。今回の例会は、5月1日の改元後に初めて開催された例会です。第126代となる新天皇の即位に伴い、30年続いた平成の時代に終わりを告げ、令和という新たな時代を迎えた日本。この皇位継承に伴い、前例のない10日間の連休となりました。

東京広尾ロータリークラブは、日本で唯一のバイリンガルクラブというユニークな特徴を誇りとしています。日本のロータリアンのほとんどは年配の男性ですが、同クラブの会員30名のうち最年少は33歳、さらに会員の約半数が女性です。ほとんどの会員がバイリンガルなため、例会は日本語と英語で行われています。

2001年創立の東京広尾ロータリークラブは、ヴァグジアルさんをはじめとする外国出身のロータリアンが中心となり東京に誕生した英語対応のクラブです。クラブ名は東京の広尾という地名から取り、マンションやアパレルショップ、大使館が立ち並ぶこの高級住宅街には会員も多く住んでいます。

現在、クラブの例会は六本木付近で行われています。このエリアは多国籍企業や高級店のメッカとして、また東京でも屈指の夜の歓楽街として知られています。例会は、東京のランドマーク的存在である54階建ての森タワーの51階にある六本木ヒルズクラブがその会場となっており、ビルの屋上展望台からは世界一の大都市圏・東京を360度見渡すことができます。また天気が良ければ、遠く離れた富士山の山頂を拝むこともできます。

日本で唯一のバイリンガルクラブというユニークな特徴を誇りとしています

海外とつながりを持つ東京広尾ロータリークラブは、とりわけグローバルな奉仕活動を得意としています。

同クラブは、ケニアでのプロジェクトを10年以上実施しています。これは元ケニア駐日大使のデニス・アウォリ氏が同クラブに所属していた頃に始まった取り組みです。

それ以来、アウォリ氏が現在所属しているナイロビ-イースト・ロータリークラブや日本のクラブと連携し、ケニア全土で30カ所以上の井戸建設を支援しています。井戸の建設は『上総掘り』として知られる19世紀の日本の技術を用いており、少人数かつ現地調達の資材だけで掘削できます。「このような井戸は電気を必要としないため、農村地域にうってつけです」。こう話すのは、2013年に東京広尾ロータリークラブの会員らと一緒にケニアに赴いた御手洗美智子さんです。このプロジェクトはロータリー財団補助金を2度授与されています。

東京広尾ロータリークラブはまた、より身近な活動も支援しています。例えば、カナディアン・インターナショナル・スクール東京のインターアクトクラブのスポンサーとなっており、ロータリー米山記念奨学会の奨学金を活用して数年ごとに外国からの大学生の日本留学を支援しています(米山梅吉:1920年に日本で初のロータリークラブを設立した人物)。パラオやミクロネシアの太平洋諸国や、グアム、北マリアナ諸島といった米国領出身の外国人が所属する第2750地区にとって、英語が堪能な会員は重要な人材であると言えます。またクラブの会員は、現地のクラブが選出した交換留学生の日本滞在時のホスト役も果たしています。

2019-20年度クラブ会長のニコラス・ボルツェさんは、日本在住が20年以上になるドイツ人。東京広尾ロータリークラブの最大の強みは、会員の多様性にあると言います。しかし見方を変えると、これは最大の懸念であるとも言えます。一時的な異動で東京に来る外国人会員が多いため、退会者数も多いのです。しかし、このような懸念とは裏腹に、クラブは拡大を続けています。ボルツェさんによると、ここ数年で会員数は50%増で安定しており、来年は多忙な一年になると予想しています。2020年東京オリンピックが開催される来年の7月と8月には会合やイベントを開催し、オリンピックで訪日する海外ロータリアンをもてなす計画を立てています。その年の年末には、クラブ創立20周年を祝うことになります。

とはいえ、こんな特別な夜には、このような話は後回しにして構いません。ワインに酔いしれ、チーズケーキを味わいながら、難しい話は脇に置いて、東京の街が寝静まるまで楽しい宴は続くのです。

• このストーリーは『The Rotarian』誌2019年9月号に掲載された記事の日本語訳です。