ロータリー行動グループが教えてくれる、ボランティア活動の極意
地球の反対側にいるロータリークラブの会員同士が協力しようとするとき、互いを結びつける共通項がないとなかなか成功しません。マリオン・バンチさん(米国、ダンウッディ・ロータリークラブ会員)とスティーブン・ムワンジェさん(ウガンダ、ムコノ・ロータリークラブ会員)をつないだのは、エイズがもたらす悲惨な影響への共通の認識でした。
バンチさんは息子をエイズ関連の病気で亡くし、ムワンジェさんはエイズが祖国の人びとを苦しめるのを目の当たりにしてきました。バンチさんがウガンダを訪れた際に出会った二人は、アフリカでのエイズ対策の難しさについて語り合いました。
「アフリカの一部の国では、エイズについて話すこと自体がタブーでした。自分が感染しているかどうか知りたくない人も多かったんです」とムワンジェさん。「だから“ロータリー・ファミリー・ヘルス・デー”を開催することにしました。これは、エイズ検査だけでなく、マラリアの検査、血糖値の測定、家族計画なども行うイベントです」
このアイデアは、バンチさんが創設した「家族の健康とエイズ予防のためのロータリー行動グループ」の看板プロジェクトとなりました。「ロータリー行動グループ」プログラムの初期に設立されたこのグループは、今年で20周年を迎えます。現在、26の行動グループで、ロータリー会員が自らの専門性を活かして奉仕プロジェクトへの助言をしたり、自らプロジェクトを立ち上げたりしています。これらの行動グループは、社会にインパクトを与えるための知恵の宝庫と言えます。
「ロータリー行動グループ」プログラムの20周年を記念して、「家族の健康とエイズ予防のためのロータリー行動グループ」のCEOであるスー・パジェットさん(イーグルキャニオン・ロータリーEクラブ会員)に、効果的なプロジェクト実施のコツを伺いました。
小さく始めて、経験から学ぶ
社会を変える取り組みは、たいてい小さく始まります。地域によって状況は大きく異なるため、最初はプロジェクトの規模を絞るのが賢明です。試験的な活動を通じて、何がうまくいき、何を改善すべきかが見えてきます。パジェットさんによると、「家族の健康」行動グループは、時間をかけてアプローチをじっくり検証してきたそうです。
「私たちが新しい国で活動を始めようとするときには、一定の手順があります。まず現地のロータリークラブに理解と協力を求め、次に保健省とかけあって基本合意書を作成します。手間はかかりますが、手順を踏めば実現できます」
パートナーシップの力は絶大
政府機関、非営利団体、企業との連携は、プロジェクトの推進力になります。地元の団体は地域の事情に詳しく、全国規模や国際的な課題に取り組む団体も心強い味方となります。
資金提供、専門知識の共有、ブランド力の提供(さらなるパートナー団体を募る上で有用)など、パートナー団体から得られるサポートは多岐にわたります。「家族の健康」行動グループのパートナー団体の一つである「南アフリカ国家エイズ評議会」のCEO、テンビシレ・ズールーさんは次のように語ります。「『家族の健康』行動グループは、官民の連携によってインパクトを何倍にもできる好例です。パートナーの幅広いネットワークが重複を防ぎ、資源を有効活用し、革新を促しています」
フィードバックの収集とインパクトの測定
ナイジェリアでの主力プログラム「ナイジェリアの家族の健康のための協力(Together for Healthy Families)」を通じて成果を上げている「母子のリプロダクティブヘルスのロータリー行動グループ」のリーダーたちが、成功の秘訣を語ってくれました。
プロジェクトを始める前には必ず会議を開きます。宗教指導者、地域の有力者、女性リーダー、若者、世帯主などを集めて話し合います。「これを始めたいから参加して」と一方的に言うのではなく、ゼロから一緒に作り上げるのです。そうすれば、彼らも主体的に取り組んでくれます
エマニュエル・アデドラポ・ルファデジュさん
共同創設者・技術顧問
正確なデータを得ることが、状況を正しく把握するカギです。どこに最も大きなインパクトをもたらせるかを示す指標を見つけ、計画・実施・評価・拡大に活かすことです
アンジェラ・ベンソンさん
理事長
失敗を恐れないでください。心を開いていれば、革新と適応が可能になります
ヒマンス・クマール・バスさん
医療部長・技術顧問
パートナー探しは、既存のつながりから始めるのがベストだと、パジェットさんは言います。バンチさんが行動グループを立ち上げたとき、彼女はすでにアトランタの米国疾病対策センター(CDC)やコカ・コーラ・アフリカ財団と関係を築いていました。
「彼らが最初に後押ししてくれました」
評判を築く
プロジェクトを進める際は、関わるすべての人に良い印象を持ってもらうことを心がけましょう。パジェットさんによると、行動グループのメンバーの献身的な姿勢が、アフリカ各地の重要人物からの支持につながったそうです。
「私たちは透明性を保ち、真摯に取り組んでいます。それが評価されているのだと思います。ただし、大切なのは最終的に成果を出すこと。政府関係者やロータリアンからの支援が広がったのは、結果を出してきたからだと信じています」
最後までやり抜く
ボランティア活動の成功には、地道なフォローアップが欠かせません。関係者全員が、メールへの迅速な返信や連絡の継続の重要性を理解している必要があります。たとえ今は協力できない相手でも、将来的にそのつながりが役立つ可能性があります。
このような姿勢が、この行動グループを非営利の成功モデルへと導きました。2011年に「ロータリー・ファミリー・ヘルス・デー」が正式に始まって以来、16カ国で350万人以上が無料の医療サービスを受けてきました。
ムワンジェさんは次のように語ります。「2009年、ガバナーエレクトだった私は、もっと大きく、もっと良く、もっと大胆に活動しようと決意しました。今ではアフリカ中でこのイベントが開催され、何百万人もの子どもたちが恩恵を受けています。新たな国が次々と参加し、今や誰もが知るイベントとなっています」
—2025年11月