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ロックファンを魅了するローターアクトクラブ

文:

きっかけは、会員たちの何気ない会話でした。バングラデシュ首都にあるダッカ・オーキッド・ローターアクトクラブの会員たちは、数日前に行ったロックコンサートが若い音楽ファンたちの活力と熱気にあふれていたことを興奮気味に話していました。

創立会長ダム・ホセイン・ロニさんは、自身はロックファンではなかったものの、それを聞いてあるアイデアを思いつきました。国内の人気ロックバンドを集めてクラブがコンサートを開催したら、ローターアクトへの注目と入会への関心が高まり、プロジェクトのための資金も集まるかもしれない……。

ロニさんはこう振り返ります。「これはビッグチャンスだ、と感じました。バングラデシュの若い世代は、コンサートや音楽イベントに夢中です。何かビッグなことをすれば、クラブやロータリーの活動について知ってもらえるのではないか、ローターアクトがただの地元クラブではなく、国際的なムーブメントの一部であることを見てもらえるのではないか、と思いました」

ダッカ・オーキッド・ローターアクトクラブの会員たち。(左から)ディダルル・アラムさん、アナフ・アディブさん、タシン・ミティさん、サダム・ホセイン・ロニさん、ファイサル・カナンさん。ロックを通じてローターアクトへの注目と入会への関心を高め、プロジェクトの資金を集めただけでなく、数名の会員が独自のバンドも結成しました。

写真提供:Reza Rahman

イベント立ち上げには相当な初期費用がかかりますが、仲間のローターアクターたちもこのアイデアに賛同してくれました。数カ月間にわたる調査と計画を経て、6月2日、ダッカ・コンベンションセンターで開催したチャリティコンサート「Empathy 2023」に、1万2千人の若い音楽ファンが押し寄せました。

出演したのは、同国の9つの人気ロックバンドとヘビーメタルバンド(Artcell、Warfaze、Shironamhin、Ashesなど)。閃光のような照明の中、ステージ上でギターがうねり、聴衆たちは一緒に歌いました。クラブにとって何より重要だったのは、多くの来場者にローターアクトの入門書とオリジナルTシャツ(イベントとローターアクトの両方のロゴ入り)を配布できたことです。

大音量で関心を引く

音楽イベントを通じて注目度を高めたダッカ・オーキッド・ローターアクトクラブが成功のヒントを紹介します。

  • 大衆文化を利用:音楽、芸術、食といった地元文化を祝うイベントを開催しました。
  • インフルエンサーを起用してイベント促進:バングラデシュの若者たちがクラブとコンサートについて知ったのは、出演バンドらによるSNS投稿でした。
  • オリジナルグッズも忘れずに:コンサート後の数週間、ダッカの街中でクラブのロゴ入りTシャツを着た人たちを見かけました。
  • 楽しむ:会員たちが結成したバンドでボーカルとハーモニウムを担当するタシン・ミティさんは、例会後にジャムセッションを行っています。「演奏を会員たちも楽しんでくれています。入会への関心も高まり、クラブの会員数が日に日に増えています」
  • 夢はビッグに:ローターアクト会員が大規模なコンサートを成功させることに懐疑的な人もいましたが、それでもクラブは挑戦しました。以来、クラブ入会への問い合わせ数は670件以上に上っています。

ロニさんによると、コンサートの後、ローターアクトへの入会について670件以上の問い合わせが寄せられました。市内に30以上のクラブを設立する計画も立てられています。出演したバンドがSNSでイベントとローターアクトについて紹介したことで、クラブのSNSページへのアクセスが急増。多くの報道機関もコンサートのニュースを取り上げました。「コンサート後の数週間、イベントで配ったTシャツを着て街を歩く若者たちを見かけました」とロニさんは言います。

ダッカ・オーキッド・ローターアクトクラブが設立されたのは、2015年、ロニさんが電気工学を学ぶために東部の町コミラからダッカに上京したときでした。それまでにもインターアクトで積極的に活動していたロニさんは、地区インターアクト代表を務めた経験を通じて契約交渉やリーダーシップのスキルも学びました。ロニさんはこう言います。「(ローターアクトクラブ設立を通じて)新しい友だちをつくり、仲間からサポートしてもらい、地域社会に変化をもたらしたかったんです」

新しくできた友人の一人、ファイサル・カナンさんは、多くの若者に奉仕に参加してもらいたいというロニさんの情熱に共感しました。コンサートの前、会員たちはローターアクトのことや、ポリオ根絶をはじめとするロータリーの活動など、時間をかけて人びとに説明しました。「ローターアクトクラブで奉仕活動をすることへの若者たちの関心を高め、いつでもどこででも奉仕が可能だと示したかった」とカナンさんは言います。

洪水などの被災地、特に都市部から離れた地域への支援を通じて、会員たちはそれを実証してきました。2016年には、土地問題をめぐる民族対立で家を失った人びとに衣類や物資を提供し、2019年には、同国北部のクリグラムまで足を運んで洪水の被災者たちに食糧、衣類、医薬品を届けました。

ロニさんは、自身が設立に携わった南アジア・インターアクト学友会を通じてインターアクトとのつながりも保っています。2022年、地区インターアクト代表だったタシン・ミティさんとともに、シレット市の洪水被災者に救援物資を届ける活動を、インターアクトクラブとローターアクトクラブ合同で実施しました。

「Empathy 2023」コンサートで集まった資金の一部は、恵まれない家庭のための冬用衣類の資金として活用されます。クラブは、2024年に屋外スタジアムでさらに大きなイベントを開催することを企画しており、このイベントの収益を洪水被災者のためのシェルター建設資金に充てたいと考えています。

ほかの若者たちもコンサートに協力しました。現在はローターアクト会員となったミティさんは、ボランティアのまとめ役となり、インターアクターたちにイベントの宣伝をお願いしました。「これまでとは違うロータリーのイメージを大勢の人に見てもらえた」とミティさんは言います。

一方、ロニさんも仕事の人脈を駆使して著名人たちに声をかけました。その中には、昨年クラブに入会した有名コメディアンもいました。さらに、カナンさんとミティさんをはじめとする数名の会員が自分たちのバンド「Shadow」を結成し、これまでロータリーやローターアクトの行事で演奏してきました。スタジアムでの今年のコンサートでもステージに上がる予定です。

「音楽界で私たちのバンドのプロモーションができれば、もっと多くの若者にローターアクトへの興味を持ってもらえる」とロニさん。「勉強や仕事で忙しい若い世代は、文化に飢えています。音楽を通じてローターアクトを紹介できれば、若い世代が奉仕に関心を抱き、変化をもたらす可能性に気づいてくれるでしょう」

本稿は『Rotary』誌2024年4月号に掲載された記事を翻訳・編集したものです。

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