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ローターアクトがもたらす大きな可能性

補助金の利用でふくらむローターアクトのインパクト

記事

殺菌ジェル1万個を入れた袋をダッカ、ディナジプール、クルナ、ラジシャヒ、ランプルの人びとに届けるバングラデシュのローターアクトクラブ会員たち。

写真提供:B M Imranul Islam EMU & M Khairul Alam(第3281地区)

2018年、地区会合に出席するためにトルコを訪れた当時の国際ロータリー会長、バリー・ラシン氏は、現地のロータリアンとともに数カ所のプロジェクト実施地を訪れました。ラシン氏が驚いたのは、それらのプロジェクトが、ロータリークラブではなくローターアクトクラブによるものだったことです。

例えば、大学生活のノウハウを新入生に教えるコースを開発するプロジェクトや、会員たちが毎週病院を訪れて入院中の子どもたちと一緒にゲームをするプロジェクトがありました。ラシン氏はこう振り返ります。「素晴らしいと思いました。ゲームをすると、子どもたちの態度ががらりと変わるのです」

その後、ラシン氏はこう考えました。ローターアクトクラブの多くがロータリークラブと同じような活動をしているのに、なぜローターアクトクラブはロータリーの“プログラム”なのか。「貴重な人材を無駄にしている」とラシン氏は感じました。「ローターアクターたちは、ロータリーをよく理解し、その一員でありたいと思う一方で、独自のやり方で活動することを望んでいました。しかし、よりよい世界を築くという奉仕への熱意は同じでした」

ローターアクトを加盟クラブとすることをラシン氏が提案し、今や世界で25万人近いローターアクターが「ロータリー会員」として活動してます。7月1日からは、ローターアクトクラブもロータリー財団補助金を受領できるようになります。

これは「重要な進展」とサラ・グローセ-フォルマーさん(ドイツ、ザールブリュッケン・ローターアクトクラブ会員)は述べます。「世界のローターアクトを見れば、かなり大きなプロジェクトを実施していることがわかります」。例えば、彼女が第1860地区の2020-21年度ローターアクト代表だったとき、地区内のローターアクトクラブがグローバル補助金プロジェクトでロータリークラブと協力し、ケニア西部で若者の能力開発をめざすプロジェクトを実施しました。この活動で、ビジネスプログラムのほか、マイクロクレジット(小口融資)、家族計画、ジェンダーに基づく暴力防止、生理用品を提供しました。

「当初は、若者たちがスポーツをしたり、楽しんだりできる場所を提供する小規模なプロジェクトを考えていました」とグローセ-フォルマーさん。「しかし、グローバル補助金について話しているうちに、いつの間にかプロジェクトが大きくなっていました」。会員たちがドイツ国内60のロータリークラブを訪問してアイデアを伝え、最終的に10万ドル以上の資金を集めました。

彼女のクラブは、ホームレスシェルターへの毛布の提供や家庭内暴力で苦しむ女性たちへの支援など、地元での社会奉仕プロジェクトも実施しています。「通常、プロジェクトを資金面で支える経済的余裕がないので、参加型のプロジェクトに力を注いでいます」

ロータリー補助金の申請

グローバル補助金は、世界に変化を生み出す強力な手段となる一方で、そのプロセスは決して容易ではありません。「最初は圧倒されました」とグローセ-フォルマーさん。グローバル補助金の申請に関心のあるローターアクターは、ロータリー財団の地域別補助金担当職員に援助と助言を求めたほうがよいと話します。ドリス・グリムさん(下記参照)も、「書類手続きを軽く見ないで」とアドバイスします。

ローターアクトクラブがグローバル補助金を提唱する場合、もう一方の提唱者はロータリークラブでなければなりません。また、ローターアクトクラブが以前にグローバル補助金でロータリークラブと協力した経験をもつことも条件となっています。「グローバル補助金で一番大切なのは、ロータリー財団の研修を受けていること、ロータリークラブと協力すること、地域社会のニーズを把握していること」とサンティアゴ・ゴメスさん(下記参照)は言います。

ローターアクトクラブは、地区補助金の資金も使えるようになります。ロータリー地区が管理する地区補助金は、ロータリー財団の使命に沿い、ニーズを抱える地元や海外の地域社会を支援するために活用できます。地区補助金の利用に関心のあるローターアクトクラブは、地区リーダーに連絡することができます。

グローバル補助金について
地区別の補助金担当職員のリスト

同じくドイツ人であるドリス・グリムさんは、スペイン在住中にローターアクトについて耳にしました。「友だちができる、スペイン語が上達する、そして“世界でよいことができる”と言われました」とグリムさん。

例会を見学したグリムさんは、クラブがギニアビサウの村で実施していたプロジェクトに衝撃を受けました。「現地に学校を建て、栄養センターも建てたのです。現地を訪ねてお金を寄付して終わりではなく、持続可能性が確保されていました。ロータリーとローターアクトに心底感心し、私も入会しました」

ドイツに帰国したグリムさんは、マンハイム・ロータリークラブに入会。その後にまた海外に住むこととなりましたが、ローターアクトとのつながりを保ち続けています。スイスのクラブに入会していた時期もあり、後には米国ノースカロライナ州での新クラブ設立も援助しました。

サンティアゴ・ゴメスさんは、コロンビアの小さな町で育ち、インターアクトクラブで活動していました。大学進学のためボゴタに移住したゴメスさんは、そこで現地のローターアクトクラブの設立を手伝い、ローターアクターの友人たちと一緒にロータリークラブと協力して、「積極的平和」を推進するグローバル補助金プロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは、国内の若者たちのリーダーシップ、ローターアクト活動の知識、紛争の予防・解決のスキルを養うためのワークショップを実施しました。

ボゴタ・センテナリオ・ロータリークラブに最近入会したゴメスさんは、紛争の犠牲となった女性たちがアパレル会社を立ち上げるのを支援するもう一つのプロジェクトに携わっています。

ローターアクトクラブ会員であり続けているゴメスさんは、ローターアクトの地位向上は大きな前進だと考えています。「ロータリアンとローターアクターの間の信頼関係を深める機会になると思います」

現在はホッケンハイム・ロータリークラブ(ドイツ)会員となったグリムさんも、ローターアクトクラブとロータリークラブの違いについて自身の見解をこう述べます。「私の経験から言えば、双方の側に多くの先入観があります。なぜロータリークラブに入会したくないのかとローターアクターに尋ねれば、“(ロータリークラブでは)ただ座っているだけで、何もしないから”と答えてきます。一方、ロータリアンは“ローターアクターは若すぎて経験が足りない”と考えています。しかし私は、どちらも間違っていると思うんです」

双方が変らなければならないことに、ゴメスさんも同感です。「ロータリークラブはもっと柔軟になる必要があると思います。コロンビアのロータリークラブの中には、もはやあまり必要ではない伝統を続けているところもあります。一方、ローターアクターも意識を変える必要があります。ローターアクトクラブとロータリークラブの管理運営は違いすぎます」

ローターアクトの地位向上がこのギャップを埋める一助になれば、とラシン氏やほかの人たちは願っています。「ローターアクターがロータリーの一員として自覚でき、尊重とインクルージョンを感じられるようにしたいと思います」

つながるローターアクトクラブ

ローターアクト内で運営される「多地区合同情報組織(MDIO)」は、世界に26あります。それぞれ規模や活動の焦点は違うものの、ローターアクトに欠かせない存在となっています。

MDIOとは何でしょうか。その最も的を射た答えはおそらく、テキサス州南端からモンタナの山々までの地域をカバーするMDIO「ロッキーマウンテン・ローターアクト」から返ってきた言葉かもしれません。「MDIOとは、突き詰めれば、ロータリーでいう“ゾーン”のローターアクト版です。MDIOは、ローターアクト研修、リソース、ガイダンス、ネットワークづくりの機会をローターアクターとロータリアンに提供することで、MDIO内のローターアクト地区とクラブをサポートしています」 

広大な地域を含むMDIOもあれば、規模がもっと小さく、活動の焦点を絞ったMDIOもあります。ドリス・グリムさんはこう言います。「ドイツMDIOは地区研修に力を入れており、ヨーロッパMDIOはヨーロッパ人精神を重んじて国境を越えた先入観の克服に力を入れています」

ロータリー地区とローターアクターをつなぐ重要な存在であるMDIOは、リーダーシップ研修とオンラインリソースを提供し、MDIO全体の奉仕プロジェクトを組織し、年次大会を開催します。

数字で見るローターアクト

  1. 10,000+

    ローターアクトクラブ数

  2. 179

    国と地域

  3. 230,000+

    会員数

現在、ローターアクターは30歳を超えてもクラブにとどまることができ、これによってローターアクトの安定性が高まり、ローターアクトの経験と知識が蓄積されています。また、帰属意識が高まれば、キャリアや人生をさらに歩んでいずれロータリークラブに入会する若者も増えると期待できます。いずれの場合も、ローターアクトへの見方は以前とは違うものとなるでしょう。ゴメスさんはこう言います。「ローターアクトはビッグなことができると、ロータリーが認めてくれたのだと思います。これこそ、私たちが必要としていたサポートです」

「ロータリアンにとっては、学習曲線があると思います」とグリムさんは話します。「今後ローターアクターをどう扱えばよいのか。ローターアクターは子どもではなく、やり方を教えなければならない存在でもありません。対等なパートナーになるとはどういうことなのか。“対等”とは何か。こうした点を理解する上で、私たちはまだ旅の途上にあります。しかし、ロータリアンの方々は、ローターアクター、特にグローバル補助金を申請するローターアクターたちがもつ潜在力に驚かれると思います」

「ロータリーはエリート主義で、ローターアクトは自由でオープンだと言う人がいます」とグローセ-フォルマーさん。しかし、彼女にとっては両者に大きな違いはありません。「ローターアクトは、ロータリーファミリーの入口として、とてもよい方法だと思います」

MDIOについてはこちらをご覧ください

 


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