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知られざるロータリーの影響

ロータリアンが創設にかかわった9つの人道支援団体

記事:

クリスマスシーズンや正月を控えた年末には、日本でも助けあいの運動や募金が多く行われます。宗教的な理由であれ、倫理的な理由であれ、「他者を助ける」という行為はどの社会でも重んじられています。

「社会に恩返しする」という考え方は、ロータリー精神の中核でもあります。多くのロータリアンにとって、それはロータリークラブでの奉仕活動や寄付にとどまるものではありません。歴史的にも現在においても、人びとを支援する多くの取り組みでロータリアンが重要な役割を担っています。医療ミッション、災害救援、気候変動との闘い、さらには国連創設への関与にいたるまで、その貢献は多岐にわたります。この記事では、さまざまな分野におけるロータリーのプロジェクトやロータリー会員の活動から生まれた世界各地の団体をご紹介します。これらの団体は、世界的・地域的に名が知られていますが、そのルーツがロータリーにあることを知る人は多くありません。 

英国:ShelterBox(シェルターボックス)

主な活動分野:災害救援

昨年に創立20周年を迎えたシェルターボックスは、Helston-Lizardロータリークラブ(英国)のプロジェクトとして始まりました。当初の目標は、被災者に必要物資を届け、避難や生活の立て直しを支援することでした。 国際的に知られる災害救援団体となった現在までに、世界で170万人を支援し、緊急シェルターと生活必需品だけでなく、長期の復興プロセスにおいて家族を支えるために必要とされる研修も提供しています。

初期のボックスには10人分のテントと寝袋、折りたたみ式シャベル、浄水タブレット、調理用具、バケツ、ロープ、懐中電灯が入っていました。しかし、各災害の状況はさまざまであるため、現在はニーズに応じて異なる品が含まれています。例えば、家が全壊した場合は家族用サイズのテントが必要とされる一方で、家屋の一部が破壊された場合には修理のために厚手の防水シートやロープ、釘などが必要とされます。

シェルターボックスは2012年以来、災害救援におけるロータリーの正式なパートナーとなっています。近隣のクラブ会員が被災地との連絡や支援の調整にあたるなど、ロータリーとのつながりを通じて、支援が行き届きにくい地域での救援活動が可能となります。シェルターボックスが最も長期的に支援しているシリアでは、2012年から救援活動が続いています。詳しくは、シェルターボックスのウェブサイト(英語)と関連ブログ記事(日本語)をご覧ください。

エチオピアでの人道的危機において活動するシェルターボックスの対応チーム

写真提供:ShelterBox

フランス:Opticiens Lunetiers sans frontières(国境のない眼鏡技師団)

主な活動分野:疾病との闘い

ご存知でしたか?

視覚障がいのある人の数は世界で3億1,400万人。そのうち80%近くは、適切な医療によって視力を回復しています。

(情報源:米国疾病対策センター[CDC])

1991年、ロータリー会員である眼鏡技師、クリスチアン・スビラさんとジャン-ルイ・ランデュさんは、ランデュさんの娘が人道的活動を行っているカメルーンを訪れました。滞在中に二人は、現地での眼鏡技師の不足により、視覚障がいと診断された患者たちがフォローアップの治療を受けていないことに気づきました。フランスに帰国した二人は、所属するPerpignanロータリークラブの助けを借りて、Opticiens Lunetiers Sans Frontières(国境のない眼鏡技師団)というNGOを立ち上げました。

二人は、ボランティアの眼鏡技師たちとともにカメルーンに同団体の最初の眼科クリニックを設立。その後も、マダガスカル、トーゴ、セネガル、モーリタニア、モロッコ南部、ハイチへと拡大したほか、未来の眼鏡技師を養成するために12カ所の運営センターを開設しました。

同団体により、230万人以上が恩恵を受け、多くの人が視力問題に適応できただけでなく、毎年、世界各地に何千という眼鏡が届けられています。同団体のもう一つの使命は検査プログラムの開発であり、子どもたちが教育を受けつづけられるように学校での視力低下防止を行うことが含まれています。Opticiens Lunetiers Sans Frontièresのウェブサイト(フランス語)はこちら

ボリビア:Cerniquem(子どものやけどリハビリセンター)

主な活動分野:疾病の予防/母子の健康

ボリビアでは、基本的な安全に対する認識の欠如や、親なしに子どもだけで留守番することが多いといった事情により、子どものやけどが多発しています。やけどを負った子どものための専門機関が同国にないことを受け、2005年、Club Santa Cruz de la Sierraロータリークラブ会員とその女性委員会が、ロータリー創設100周年の記念事業として「Cerniquem」(子どものやけどリハビリセンター)を設立。同センターでは、やけどを負った低所得家族の子どもに、やけどの程度にかかわらず総合的なリハビリを無料で提供しています。患者の85%は10歳未満の子どもで、やけどにより一生残る身体的・精神的な傷に苦しむことになります。そのため、医者、精神科医、理学療法士、ボランティアは、子どもたちがトラウマ、身体障がい、苦痛を乗り越えられるよう支援しています。また、退院後の回復を支える方法について家族を指導したり、自宅での子どものやけど防止方法について一般の人びとへの啓発を行っています。

コロナ禍が続く中でも、同センターはバーチャルな方法を通じて子どもの安全とやけど防止を推進しています。同センターのウェブサイト(スペイン語)はこちら

米国:Citizen’s Climate Lobby(CCL)

主な活動分野:環境

ご存知でしたか?

2014年から2020年までは、史上で最も気温が高い7年間となりました。 

(情報源:NASA)

2006年、Coronadoロータリークラブ(米国)のベテラン会員で、人道的活動に時間と資金を捧げてきたマーシャル・サンダースさんは、米国のアル・ゴア元副大統領によるドキュメンタリー映画『不都合な真実』(原題『An Inconvenient Truth』)を鑑賞し、気候変動による現存の脅威に取り組まない限り、自身の努力もすべてが無駄になることに気づきました。そこで、ロータリークラブ、学校、教会、高齢者の入居施設など、招かれればどこででも気候変動について話をしました。何千人もの市民が声をひとつにして国会議員からの支持を得るために、組織だった取り組みが必要であることは明らかでした。このため、サンダースさんはCitizens’ Climate Lobby(CCL)と呼ばれる団体を立ち上げました。

その後、CCLのメンバーたちは「carbon fee and dividend」(炭素課金とその還付)という概念を唱道する活動を開始。これは、排出するグリーンハウスガスについて事業者に課金し(1トンあたり15ドル)、毎年課金額を増額することを提案するものです。徴収された資金は、高額な燃料費の代償として消費者に直接払われます。目標は、市場原理を通じたクリーンエネルギー技術の採用を奨励することです。

サンダースさんは2019年に他界しましたが、同氏が築いた団体は活動し続けています。現在、ロータリー会員を含む20万人近くがCCLをサポートしており、その親しみやすく超党派的なアプローチにより多くの国会議員の賛同を得ています。詳しくは、CCLのウェブサイトおよびCCL Japanのウェブサイト(日本語)をご覧ください。 

Citizens’ Climate Lobbyには現在、ロータリー会員を含め20万人近い支援者がいます。

写真提供:Citizens’ Climate Lobby

オーストラリア:Police Citizens Youth Club

主な活動分野:教育/地域開発

1937年、警察総監でロータリー会員であったウィリアム・ジョン・マッケイさんは、路上ではなく安全で前向きな環境を若者に与えることを目的に、Sydneyロータリークラブを通じて、市民とのパートナーシップ「Police Citizens Youth Club(PCYC)」を立ち上げました。長年にわたって同団体は発展し、ニュー・サウスウェールズ全域の65以上のクラブと180人の警察官がそのプログラムにかかわっています。

非政府団体かつ自立した慈善団体として運営されているPCYCは、ニュー・サウスウェールズ州の警察とパートナーシップを組み、若者が前向きに生き、スキルと倫理観、リーダーシップを身につけられるよう支援しています。現在もロータリーが支援していますPCYCでは、奉仕の価値を教えることで次世代のリーダーを育成するというロータリーの信念に沿い、主なスポーツ、レクリエーション、教育、リーダーシップ、文化のプログラムを通じて7万人以上の若者の参加を促すことを目指しています。

PCYCはまた、犯罪防止、青少年の能力開発、社会責任といったプログラムを通じて、危機下にある若者が非行から立ち直れるように支援しています。最近では、社会から切り離された若者たちと就職の機会を結びつけるプロジェクト「RISEUP」を立ち上げ、就職のための訓練、メンタリング、職能研修などを行っています。 詳しくはPCYCのウェブサイト(英語)をご覧ください。

イタリア:Vision+ 

主な活動分野:疾病との闘い

Vision+は、2005年、眼科医、ビジネス関係者、起業家らがグループとなり、自らの職業スキルをあらゆる年齢層の眼疾患の予防・治療および失明予防に役立てるために設立されました。Milano EstロータリークラブとMilano San Babilaロータリークラブ(イタリア)などのロータリー会員により設立された同団体は、難民、ホームレスの人びと、避難民など、イタリア国内と発展途上国で社会的に弱い立場にある人たちを支援する複数年のプロジェクトを実施しています。プロジェクトでは、市民の啓発、設備の寄贈、眼科クリニックへの医師や専門職従事者ボランティアの派遣などを行っており、さまざまな企業や事業主からの寄付とパートナーシップがこれを支えています。

プロジェクトを持続可能とするために、眼科医から成る委員会が指導とモニタリング、評価を行っています。また、これまでに国内外のプロジェクトを通じて各地の当局との継続的なパートナーシップが築かれました。

イタリアのロータリー第2041地区、第2042地区、および四つのロータリークラブも同団体を支援しています。Vision+のウェブサイト(イタリア語)はこちら

日本:国際平和と開発機構(IPSO)

主な活動分野:平和の促進

元ロータリー米山記念奨学生、ジャンルカ・ボナンノさんは、国際開発の分野で二つの博士号を持ち(日本と英国の大学)、世界銀行やアジア開発銀行といった有名な国際機関で働いた経験もあります。しかし、奨学金での学業を終えたボナンノさんは、教授として京都に残り、人道的プロジェクトでロータリアンと協力していくことを決意しました。この協力を可能にするため、ボナンノさんとロータリー第2650地区(日本)のロータリアンが、NGO「国際平和と開発機構」(International Peace and Sustainability Organization、IPSO)を設立。同団体が掲げる目標は、学問的研究と現場での施策との間に存在する乖離をなくし、両者をつなげることです。

2015年以来、IPSOは既にインドネシア、ネパール、ミャンマー、ホンジュラス、グアテマラといった多くの国で、マイクロクレジット(小口融資)や職業研修、水と衛生、地震被災地の病院の支援など、数々のプロジェクトでロータリアンと協力しています。比較的最近に設立されたにもかかわらず、今年10月には 「京都平和会議」を主催(共催:日本ロータリーEクラブ2650、トリノ大学国際問題研究所)。ハイブリッド式で開催されたこのイベントには、ロータリーの巨大な平和構築者ネットワーク(平和フェロー、平和のためのロータリー行動グループなど)も参加しました。詳しくはIPSOのウェブサイト(英語)と関連ブログ記事(日本語)をご覧ください。

写真提供:Gianluca Bonanno

ブラジル:Espro(就職のための社会教育)

主な活動分野:教育、地域経済の発展

ご存知でしたか?

2018年にマイクロファイナンス(小口融資)を利用した5人中4人が女性であり、そのうち65%が銀行や融資機関へのアクセスが難しい僻地に住んでいました。

(情報源:Microfinance Barometer 2019)

質の高い教育を提供し、特に若い世代の失業率を削減することは、数十年にわたりブラジルが抱えてきた問題です。この状況を受け、取り残された若者たちが社会の一員となれるよう、1979年、 São Pauloロータリークラブ会長だったカルロス・アルベルト・ヘルナンデスさんが、同クラブの178人の会員の力を借りて「Espro - Professionalizing Social Education」を設立しました。

月収640ドル以下の家庭の若者への研修を通じて、労働市場が求めるスキルや企業の構造について指導。また、時間管理、プロジェクト管理、起業家精神など就職に役立つスキルも教えています。

さらに、若者たちを実習生として企業に紹介しています。創立以来、Esproによって既に30万人ほどの若者が研修を受けており、実習生たちは給与を受け取っているだけでなく、その63%が実習を受けた会社にとどまっています。Lesproのウェブサイト(ポルトガル語)はこちら

オーストリア:SOS Children's Village(SOS子どもの村)

主な活動分野:教育、子どもへの支援

オーストリアのロータリークラブ会員、ヘルマン・グマイナーさんが1949年にイムスト(オーストリア)に初めて「SOS Children's Village」(SOS子どもの村)を設立した当初、孤児や捨て子など社会から取り残された子どもたちが、家族のようなコミュニティで愛情あふれる家に住めるようにすることに関心を抱いていました。その後、同団体は世界各地に広がり、今では米国を含む135の国・地域に2,100以上の施設とプログラムがあります。孤児や捨て子の世話をしている独立した非政府・非営利団体として最大の団体の一つとなった現在は、恵まれない子どもへの人道的支援に加え、世界中でこのような子どもたちの利益と権利を守っています。 

児童福祉の仕事をしていたグマイナーさんは、第二次大戦で孤児となった子どもたちが当時の孤児院の劣悪な状況下で暮らしているのを目のあたりにしました。捨て子や親のいない子どもたちが、「母親」と兄弟姉妹のいる家族と一緒に自分の家で暮らすというグマイナーさんのビジョンの下、各SOS Children's Villageには約10の家族があり、各家族が「母親」(時には「父親」)と共に一つ屋根の下に住んでいます。母親と父親となる人たちは、社会的教育学の研修を受けた教育者であり、それぞれが5~7人の子どもと共に暮らしています。

こうした子どもたちのニーズは非常に複雑であるため、SOS Children´s Villagesでは現在、親子の絆を強めるための家族イニシアチブや、青少年が立派な大人になるための長期的・短期的な支援など、数多くのプログラムを実施しています。詳しくはSOS Children's Villageのウェブサイト(英語)をご覧ください。