「将来何になりたい?」 こう尋ねると、あるイラク難民の男の子は、医者になった将来の自分の姿を描きました。ほかの子は、カラフルなペンを使って、イラクにいた頃の楽しい思い出を描いています。ここヨルダンには、イラクを逃れてきた避難民が20万人。イラクのほかにも、パレスチナやシリアなど、紛争に苦しむ近隣国からの避難民を受け入れています。
ヨルダンの非営利団体「Collateral Repair Project」の元ボランティア、アレクサンドラ・ドーリーさんは、アートプロジェクトというささやかな活動で、異国の慣れない地に暮らす難民の子どもたちを救うことができると考えています。カナダのバンクーバー周辺の複数のロータリークラブからの支援を受け、彼女は、避難民の子どもたちが夢や希望を表現するためのアートプログラムを開始しました。
ユニセフとWHOは、退去を強いられた避難民が備えるべき生活スキルとして、問題解決、創造的思考、効果的なコミュニケーション、他者への共感、感情とストレスの対処能力などを挙げています。ドーリーさんがこのプログラムを思いたったきっかけは、それを読んだことでした。「セラピストの資格があるわけではありませんが、アートを通じて子どもたちを癒し、これらのスキルを教えることができると思った」とドーリーさんは語ります。
「子どもが子どもらしく」いられるためにと、幼い子どもたちのためにアートプログラムを開始した一方で、十代の若者たちもプログラムを手伝いながらリーダーシップの力を磨いています。「ティーンエイジャーたちは、地域社会のために貢献し、幼い子どもたちの手本となりたいと心から考えているようです」とドーリーさん。これら十代の若者たちもアートプログラムに参加できるよう、センターの壁にカラフルな壁画を描くプロジェクトを始めました。「この壁画作成は、若者たちのストレス解消の手助けであると同時に、プライドの源になっている」と彼女は話します。壁画用の画材はすべて、ロータリアンからの寄付で購入しました。
2006年に設立されたCollateral Repair Projectは、ヨルダンに移住した難民たちにコミュニティの一員としての意識をもってもらうために、地元コミュニティセンターを拠点に、パソコンや英語の授業、女性の職業支援を行うなどして、難民を支援してきました。バンクーバー出身のドーリーさんは、ロータリーのグローバル補助金奨学生として英国のサセックス大学に留学。最近、社会開発の修士号を取得した彼女は、卒論研究のためにヨルダンのアマンに3カ月滞在した際、この団体とともにボランティア活動を行いました。
しかし、難民を助けることへのドーリーさんの関心は、彼女が高校時代にロータリー青少年交換でブダペスト(ハンガリー)に留学したときにまでさかのぼります。交換留学中に孤児院でボランティア活動をした彼女は、アートや演劇を通じた子どもたちとの触れ合いを経験。「青少年交換での経験が転機となり、世界的な問題への関心をもつようになった」と語ります。
一方、彼女をずっと見守ってきたロータリアンの一人が、第5020地区奨学金委員長の、バーバラ・キャメロンさんです。キャメロンさんは、ドーリーさんの奨学金申請から、ヨルダンでのボランティア活動まで、相談役として支えてきました。アートプログラムのために2,000ドル以上の資金を集めたのも、キャメロンさんでした。
留学を終えてカナダに帰ったドーリーさん。これからも難民や移民への支援活動を続けながら、Collateral Repair Projectへの認識向上とサポートを続けていくつもりです。いつの日か、中東に戻って強制難民に関する博士号を取りたいと考えています。将来の夢は、政府からの支援に頼らずに、難民がスキルを身につけるための包括的なプログラムを支える政策の立案に携わることです。
「世界では紛争が絶えず、大勢の人たちが難民となっています。彼らが必要としているのは、自らの声を届かせ、力をもつことができるようにするための政策なのです」と語るドーリーさん。「そのために役立つことが、私の願いです」
>> 奨学金の機会について最寄りのロータリークラブに問い合わせる
>> 奨学金を提供する
>> グローバル補助金について
このほかのロータリーの話題は国際ロータリーツイッターをフォローしてご覧ください。
ロータリーニュース