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ロータリーの再想像

困難な1年でしたが、ロータリーは、変化に対応しながら成功を導けることをあらためて証明しました。 今年度に学んだことは、今後何年にもわたってロータリーを形づくるものとなるでしょう。

— ジョン・ヒューコ(国際ロータリー事務総長)

2020年7月1日にロータリーの新年度が始まったとき、新型コロナの世界的流行が始まってから既に4カ月が経過していました。 世界中の何百万人もの人が恐怖、不確実性、喪失感を経験し、私たちもそれらと無縁ではありませんでした。 この困難な時期に、ロータリー会員はつながり、奉仕するという共通の目的のもとに結集しました。 直接対面式の例会はバーチャル形式に変わり、マスクの作成や救急隊員への個人用防護具の寄付などの奉仕プロジェクトが実施されるようになりました。

このような状況の中、RI職員も会員サポートと運営支援に当たり、ロータリーが繁栄するための新たな方法を模索しながら、4つの行動計画の優先事項への取り組みに注力し続けました。 また、「環境」が新しい重点分野として追加されたほか、 初の数百万ドル規模の補助金が授与され、ポリオ根絶に向けた大きな達成もありました。 また、会員の積極的参加を維持するための学習の機会が開発され、会員としての経験を向上させるテクノロジーが導入されました。

困難な年度でしたが、ロータリーは行動人から成る組織として、世界がかつてないほどにロータリーの活動を必要としていると考え、 そして実際に行動しました。

ロータリーでの経験を向上させる

私たちが奉仕する人や地域社会だけでなく、奉仕に実行する人も、自分の存在が認められ、声が聞き入れられていると感じる必要があります。 今年度は、会員や参加者が個人的なまたは職業上の目標を達成できる有意義かつ魅力的な機会を提供することで、ロータリーでの経験を向上させることに注力しました。

会員現況

2020-21年度、会員数は比較的安定しており、46,000以上のクラブで140万人以上のロータリアンとローターアクターが活動しています。 既存のクラブが新会員の関心を引き、既存会員と魅了なっている一方で、何百もの新しい、異なるタイプのクラブが結成されています。 これらの新クラブは、ロータリーの基盤を広げ、より多様な参加者の関心を呼び寄せています。

多様性でロータリーを強化する

ロータリーで共に行動を起こす人たちが、経験や文化、考え方など、地域社会やコミュニティの多様性を反映していれば、ロータリーの奉仕の能力はさらに高まります。 「多様性」は、長年にわたるロータリーの中核的価値観であり、これからも私たちが互いに、そして地域社会と接する際の道しるべとなるものです。 成長と学習の機会はたくさんあります。

今年度も引き続き、DEI(多様性、公平さ、開放性[インクルージョン])の声明に基づいた力強い行動計画を実行しました。 ロータリーのリーダーは、DEIをロータリーの文化に定着させるために、ロータリーの会員と、専門的経験をもつ参加者から成るDEIタスクフォースを招集しました。 まず、世界中のロータリー会員が多様性、公平さ、開放性(インクルージョン)についてどのように認識し、経験しているかを評価するための初のDEI調査を実施し、会員の経験について直接伺いました。 この調査結果は、今後も変化をもたらし、ロータリーを強化するための実行可能な計画を立てるのに役立ちます。

COVID-19の課題に直面し、ロータリークラブとパートナー団体は、教育へのアクセスを支援するための新しい方法を見つけています。もっと読む

在宅での学習

多くの会員が、公衆衛生機関の助言に従い、新型コロナウイルスの蔓延を抑えるために自宅に待機しながら、ロータリーのラーニングセンターを利用してスキルを高めたり、新しいことを学んだりしました。 ロータリー会員は今年度、ロータリーの公共イメージや多様性に関する新しいコースを含め、延べ144,000以上のコースを修了しました。

また、トーストマスターズインターナショナルとの提携により、リーダーシップとコミュニケーションのスキルに関する8つのコースが導入されました。 現在までに15,000人以上の方にご登録いただいています。

ラーニングセンターでは、最も若い参加者にもインタラクティブなコースを提供しています。 奉仕学習は、若者が地域社会の問題の原因に取り組み、リーダーシップスキルを磨くための、成果が実証されている方法です。 National Youth Leadership Council(青少年による奉仕学習分野の専門団体)とのパートナーシップにより開発された新しい奉仕学習のコースは、若者が持続的な変化を起こし、生涯にわたる奉仕の道を築くことを目的としています。

クラブの枠組みを超えた経験

今年度は新たに5つのロータリー親睦活動グループが加わり、グループ数は合計で90以上となりました。 ロータリーの親睦活動を通じて、会員は共通の趣味を土台として仲間と活動し、クラブの枠組みを超えて専門的なスキルを磨くことができます。

また、「Rotary Action Group for Menstrual Health and Hygiene」(月経衛生対処のためのロータリー行動グループ)と「Rotary Action Group for Refugees, Forced Displacement, and Migration」(難民、強制退去者、移住者のためのロータリー行動グループ)の2つのロータリー行動グループが結成され、グループ数は27に増えました。これらのグループは、クラブや地区が奉仕プロジェクトを立案・実施するのを支援できます。

ロータリアンとローターアクターのつながり

ホルガー・クナークRI会長は、ロータリアンとローターアクターの協力関係を強調、奨励するために、3つのバーチャル会長主催会議を開催しました。 これらの行事では、Rotaract Brazil MDIO(ブラジルの多地区合同情報組織)、第9141地区(ナイジェリア)、Ascension Rotaract Network MDIO(米国の多地区合同情報組織)が運営を担いました。 また、行事の企画と運営にローターアクターが大きく関与し、世界中から4,400人以上の登録者が集まりました。

より大きなインパクトをもたらす

行動人であるロータリーの会員は、新型コロナウイルスの世界的流行という大きな課題にも解決策をもたらします。 事務局は、地元や海外の地域社会に有意義な変化をもたらすプログラム、リソース、機会を提供することで、クラブがインパクトを高められるよう支援しています。

アフリカ地域における野生型ポリオ根絶の認定

今年度の初めに、世界保健機関(WHO)がアフリカ地域での野生型ポリオウイルス根絶を認定しました。 これは、WHOの6地域のうち、5地域(世界人口の90%以上を占める)で野生型ポリオウイルスが根絶されたことを意味し、 ポリオ根絶活動における大きな快挙です。

ロータリーの新しい大規模プログラム補助金は、ザンビアでのマラリア根絶活動のように、成果が実証されている取り組みをさらに大きな規模で実施するための補助金です。もっと読む

 

初の大規模プログラム補助金

ロータリー財団は、初の大規模プログラム補助金を、成果が実証されたロータリー会員主導の「Partners for a Malaria-Free Zambia」(マラリアのないザンビアのためのパートナー)プログラムに授与しました。 毎年200万ドルが授与される大規模プログラム補助金では、ロータリー会員の貢献と専門知識を基に、証拠に基づいて開発された重点分野でのプログラムを拡大し、より多くの地域社会を支援するために資金が活用されます。

環境の保護

ロータリーは、新たに追加された重点分野を通じて、天然資源の保全と保護を促進し、環境の持続可能性を高め、人と環境との調和を促す活動を支援します。

ロータリー会員は長年、環境を保護する活動を行ってきました。その活動は、オオカバマダラ(蝶の一種)の保護草原保護と牧畜農家の支援プラスチックがもたらす影響に関する認識向上など、多岐に渡ります。 新年度からは、環境保護を目的としたプロジェクトのためのグローバル補助金を申請できます。

この分野でのロータリー活動が拡大するにつれ、Environmental Sustainability Rotary Action Group(環境の持続可能性ロータリー行動グループ)のようなグループは、リソースやサポートを提供する重要な役割を果たすことになるでしょう。

補助金の成長

地区補助金の申請が安定している一方で、グローバル補助金の需要は引き続き大きく伸びています。 5月1日現在、ロータリー財団は、昨年度の1,359件を上回る1,683件のグローバル補助金を授与しています。 このため財団は最近、グローバル補助金における需要と供給のバランスを図り、より多くのクラブが補助金の活動に参加できるよう、方針の変更(7月1日より有効)を承認しました。

  • 432.00

    承認された地区補助金の数(合計3,100万ドル)

  • 1683.00

    承認されたグローバル補助金の数(WFからの4,700万ドルを含む合計1億2,000万ドル)

  • 28.00

    災害救援補助金の数(合計688,000ドル)

寄付の1年

ロータリーは、ロータリー財団への寄付4億1,000万ドルという目標を設定しました。とても野心的な目標であり、新型コロナウイルスによる危機的状況においては尚のこと大きな目標となります。 しかし、このような年度においても多大な支援が寄せられました。 世界ポリオデーには92万ドル以上の寄付が寄せられ、この額は世界ポリオデーのオンライン寄付では最高額となります。 また、ビル&メリンダ・ゲイツ財団による2倍額の上乗せの結果、270万ドル以上がポリオプラスに寄付されました。 12月の「寄付の火曜日」(Giving Tuesday)にちなむご寄付は昨年度より17%増加し、目標を上回る783,000ドル以上を集め、最高額を更新しました。

ご寄付いただいた皆さまのおかげで、今年度のファンドレイジング目標を達成できました。

困難な時期での適応力

コロナ禍では、クラブ例会、ファンドレイジング、奉仕プロジェクトの実施などにおいて、テクノロジーの活用が増えました。 ロータリーは、つながりと奉仕のための新しい方法を見つけるために、変化する状況に適応してきました。

ロータリーによる対応

ロータリークラブとローターアクトクラブは、コロナ禍に対応し、地域社会が最も必要としていることに取り組みました。 イタリア、スペイン、スウェーデンのロータリアンは、孤立した高齢者の買い物を手伝い、定期的に電話をかけて孤立状況という課題に取り組みました。 ナイジェリアのポートハーコートでは、ローターアクターが清掃用具や保健に関する情報を近隣の公共医療センターに提供し、新型コロナ感染の第二波を防ぐことができました(詳しくはこちらから、英語のみ)。

ロータリー会員は、ポリオと闘ってきた数十年の経験を生かして、各地の新型コロナワクチン接種活動を支援しました。 英国では、国中のロータリアンが予防接種クリニックでボランティアとして活動しました。 米国ノースカロライナ州では、12,000人以上のロータリアンが地元保健当局と協力し、データ入力、訪問者の誘導、アポイントメントの確認などを支援しました。 スリランカでは、クラブが世界保健機関や保健省と連携し、予防接種を促進するための推進資料を作成しました。

ポリオのインフラを新型コロナ対応で活用

コロナ禍によりポリオワクチンの予防接種活動が一時的に中断されましたが、ロータリーと世界ポリオ根絶推進計画(GPEI)が築いたポリオのインフラは、その後も新型コロナへの対応で活用されています。

スリランカでは、ロータリアン、ローターアクター、インターアクターが協力して、コロナ禍に合わせた行動の変化を促し、ビジネスの安全基準を導入する全国的なプロジェクトを行いました。 もっと読む

アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンでは、ポリオ対策のために使用されていた緊急オペレーションセンターが、新型コロナ対応の調整センターとして活用されました。 ワクチンの保管、輸送、配布に必要となるロジスティクス、ネットワーク、システムは、インドなどでの新型コロナ対応活動で役立てられており、そこでは健康診断や治療を含む集団予防接種キャンペーンが行われています。

2020年半ばに、アフガニスタンとパキスタンでのポリオ予防接種活動が再開されました。 ワクチン接種者は、家族や自分自身の安全を守るためにマスク着用や頻繁な手洗いなどの予防措置をとりながら、何百万人もの子どもたちにワクチン接種を行っています。

ニューノーマル(新たな標準)

今年度は、多くの人にとって、節目となる行事や祝い事がオンラインへと移行しました。 ロータリーでは、国際協議会や地域リーダーグローバル研修セミナーなどの研修行事がオンラインで行われました。 私たちは、80カ国、24のタイムゾーンにいる人たちを対象に、リーダーとしての新しい役割の準備をするための何百時間ものインストラクションやディスカッションをオンラインで実施。 また、ロータリーのラーニングセンターでは、クラブや地区が研修行事をバーチャル形式で開催できるよう支援するためのコースやリソースが作成されました。

2021年ロータリー国際大会は、当初予定していた台北ではなく、バーチャル形式ので開催が必要となることがその年の初頭に明らかになりました。 そこで、会員同士がつながり、情報を交換し、共に楽しむことができるバーチャル国際大会を開催しました。この方法により、当初、台北に来ることができなかった会員も参加できるようになりました。

バーチャル国際大会では、毎日、2020-21年度の会長テーマ「ロータリーは機会の扉を開く」に焦点が置かれ、 3つの大会前会議、3つの本会議、20の分科会、バーチャル友愛の家での何百もの展示、その他さまざまなアクティビティなど、さまざまな催しが行われました。

ファンドレイジングの新たな方法

ロータリー会員が、誕生日や記念日、または世界ポリオデーなどの特別な行事に合わせてファンドレイジングを立ち上げることができる、新しいデジタルツール「Raise for Rotary」が導入されました。 このようなピアツーピア(仲間や友人同士で行う)の募金方法により、ロータリー会員がEメールやソーシャルメディアを利用して資金調達の可能性を広げることができます。

Raise for Rotaryが導入された8月以来、既に360,800が寄せられました。 現在、このツールは英語のみで提供されており、寄付は米ドルのみでお受けしています。今後、ほかの通貨でもご利用いただけるようにする予定となっています。

バーチャル交換

直接対面式のロータリー青少年交換活動は一時中断を余儀なくされましたが、バーチャル交換が実施され、それによって安全な方法で異文化交流を行うことが可能となりました。 バーチャル交換の強みやインパクト、また、どのように適応力が発揮されたか、ロータリー青少年交換の2019-20年度年次報告でご覧ください。

新たなつながりを築く

また、人びとの多彩な才能やアイデアが生かされることによって、好ましい変化が生まれます。 ロータリーは、会員の力を結集し、親睦と奉仕の情熱を共有する人びととのパートナーシップを築くことで、より多くのことを成し遂げることができます。

ロータリーブランドの強化

2020年、主に北米地域の英語を使用する会員を対象とした雑誌『ザ・ロータリアン』は、約110年の歴史を経て、『ロータリー』に誌名を変更しました。 この新しい名称は、ローターアクター、プログラム参加者、学友など、ロータリーコミュニティのメンバーをより包括的に表しています。 また、ロータリーの認知度を高めるという戦略的目標を支え、30以上ある地域雑誌との整合性を図ります。

また、ロータリーのインパクトを高め、読者層を広げ、関心を高めるような記事を読者にお届けるため、雑誌の外観とコンテンツを一新しました。

フィリピンのロータリークラブは、試行錯誤を繰り返して、都市部から村にトイレを設置し、衛生教育を提供しています。 また、このプロジェクトでは、地元の教師に少額の報酬を支払って衛生教育のワークショップを担当してもらい、衛生習慣の改善を促しました。 もっと読む

ロータリーの枠組みを超えてネットワークを広げる

トーストマスターズインターナショナルとの提携により、会員は新しいスキルを身につけ、ネットワークを広げています。 ガーナのロータリアンは、トーストマスターズ会員を含むロータリークラブと、ロータリアンを含むトーストマスターズクラブの設立を支援しました。 フィリピンでは、Pilipinas Rotaract MDIOが地元トーストマスターズと協力して、バーチャル形式のスピーチプログラムを開発しました。ローターアクターは、トーストマスターズが開発したラーニングセンターのコースを履修した後、トーストマスターズ会員を相手にスピーチを行い、 トーストマスターズ会員からスキル向上の助言やサポートを受けました。

このような協力関係は、より多くの人びとにロータリーについて知ってもらい、地域社会/コミュニティとの結びつきを強め、ロータリーの活動を新たな方法で拡大することにつながります。 実際に、トーストマスターズ会員から530件以上のロータリー入会の問い合わせが寄せられています。

パートナーシップや協力関係は、各地域社会でも築くことができます。 グアテマラでは、地元クラブと米国のクラブがEngineers Without Borders(国境なきエンジニアたち)と協力して歩道橋を建設し、コロナ禍において人びとが診療所、学校、市場に行くのに役立っています。 このプロジェクトは大成功を収め、ロータリアンの土木技師たちは、12カ国の都市計画者たちが各地域で同様のプロジェクトを実施できるよういするためのロードマップを作成しました。

ソーシャルメディアでつながる

新型コロナウイルスのために外出を控える中、多くの会員はロータリーのソーシャルメディアを通じて情報を入手し、オンラインで活動しました。 ロータリーのソーシャルメディアは、昨年度から4%増の250万人の利用者(フォロワー)を獲得しました。

今年度は大きな変化がありましたが、ロータリー会員とRIスタッフもまた適応力を発揮しました。 また、課題にも直面しましたが、多くを達成できたことを嬉しく思います。 どのような状況になっても、会員をサポートすることが事務局の最優先事項であることに変わりはありません。 ロータリーの新年度がどのようになるのか楽しみです。