命の橋を築く
記事:Donna Polydoros
国際ロータリー・ニュース:2009年2月16日
自分たちの苦労を再現するため、乾季のニシ川を渡るムティノの村人たち。写真提供:ジョン・ブルッカー氏
ケニアのカジュキ村(Kajuki)とムティノ村(Mutino)の近くを流れるニシ川では、かつて、年間50人もの命が奪われていました。
しかし、メル・ロータリー・クラブ(ケニア)とミドルトン・ロータリー・クラブ(英国グレーター・マンチェスター)が実施したマッチング・グラント・プロジェクトで橋が建設されたおかげで、村人たちは安全に川を渡れるにようになり、その結果、村の経済にも変化が現れています。
橋が建設される以前、ムティノの村人たちは、48キロメートルも遠回りをして安全な地点から川を渡るしかなく、市場や病院のある対岸のカジュキ村に行くのが非常に困難な状況でした。緊急時に浅瀬を渡ろうとして命を落とした村人もいました。
「村人たちの生活は一転しました」と、メル・クラブ会長のジュリウス・ガトブ・ムウィシンブ氏は、プロジェクトの恩恵を振り返りながら語ります。「家族や友人の命を奪ったこの川の上を徒歩で渡る喜びを味わおうと、わざわざ遠くからやってくる人もいるほどです」
7月に行われた橋の開通式では、ケニア人の妊婦とそれを支える数人の女性たちが水の中を歩いてわたり、これを見たムウィシンブ氏とジョン・ブルッカー地区補助金委員長は、こみ上げる感情をこらえるのに精一杯でした。この女性たちは、橋が立てられる前の自分たちの苦労を再現してみせたのでした。
「妊婦を介助しながら川を渡る女性たちの姿には、胸が熱くなるものがありました。この橋が村人たちにとっていかに大切であるかを実感しました。雨季には水位が2メートル以上になることもあるのです」とブルッカー氏は述べます。
はじまり
「エリオット・プール橋」と呼ばれるこのプロジェクトのアイデアは、2005年、ブルッカー氏がBBCテレビの番組、「Blue Peter」を見たときに思いついたものでした。この番組は、エリオット・イングリスという少年がケニアを訪れ、人道的プロジェクトを手伝うという内容でした。早速ブルッカー氏はイングリス君の家族に連絡を取り、ムティノ村とカジュキ村の間に橋が必要とされていることを知りました。ブルッカー氏はまた、設立されたばかりのメル・ロータリー・クラブにも連絡し、自分とミドルトン・クラブがどう援助できるかを尋ねました。
ムウィシンブ氏によると、2カ月にわたる激しい雨の後も、橋の状態はとても良いと言います。過去に2度、ケニア政府が橋の建設を試みましたが、豪雨で2回とも流されてしまったそうです。
橋のおかげで、早くも村の経済には変化が見られるようになったとブルッカー氏は言います。ムティノの村人たちはカジュキ村に農作物を簡単に届けることができ、また、以前には行くことのできなかった役所や学校、病院にも行けるようになりました。橋の近くにホテルやレストランを立てる企業も出てきました。
「橋まで歩いてきて、ひざまずいて祈りだす人もいます。それほど、この橋は彼らにとって大きな意味があるのです」とブルッカー氏。
両クラブは、ケニアのタラカでもう一つのマッチング・グラント・プロジェクトも協同で実施しています。そこでは、地表の岩石露頭から流れ出る水を集める水槽を建設しています。さらにこれらのクラブは、乾季にケニアの村人たちが使う水を集める設備を作るための保健、飢餓追放、人間性尊重(3-H)補助金も申請中です。
メル・クラブとミドルトン・クラブのこれらの協同プロジェクトには、イングリス君の家族と複数の英国のロータリー・クラブが、既に募金への協力を申し出ています。